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札幌地方裁判所 平成9年(行ウ)24号 判決 1998年7月17日

原告

大坪富美子

被告

桂信雄

右訴訟代理人弁護士

山根喬

参加人

札幌市長桂信雄

右訴訟代理人弁護士

山根喬

右指定代理人

生島典明

藤井透

本間芳明

吉沢政昭

山田幸徳

主文

一  被告は、札幌市に対し、二〇四万一三二四円を支払え。

二  原告の本件訴えのうち、被告に対し、札幌市が札幌市交通局職員及び札幌市水道局職員について支出した札幌市職員共済組合に対する負担金並びに給与各相当額並びにこれらに対する昭和六三年六月一日から支払済みまで年五分の割合による金員の支払を求める部分を却下する。

三  原告のその余の請求を棄却する。

四  訴訟費用はこれを五〇分し、その一を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

被告は、札幌市に対し、六三三六万五八二七円及びこれに対する昭和六三年六月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、札幌市の住民である原告が、札幌市職員が地方公務員法又は地方公営企業労働関係法により許される専従期間を超えて職員団体又は労働組合の業務に従事するために欠勤することを札幌市長(以下「市長」という。)が認めたのは、市長の裁量権の範囲を逸脱するもので違法であり、その期間右職員らについて札幌市が給与(四六八八万七七八一円)及び札幌市職員共済組合(以下「共済組合」という。)に対する地方公共団体の負担金(一六四七万八〇四六円。以下「負担金」という。)を支出した行為も違法であって、これらの支出により札幌市は支出相当額の損害を被ったと主張して、市長の職にある被告に対し、住民訴訟による損害賠償請求をした事案である。

一  前提となる事実(文中に摘示した証拠にかかる事実のほかは、いずれも争いがない。)

1  原告は、札幌市の住民であり、被告は、平成三年五月二日から市長の職にある(被告が市長に就任した時期について弁論の全趣旨)。

2  札幌市は、軌道事業、自動車運送事業及び鉄道事業を設置し、地方公営企業法に基づき、その管理者として札幌市交通事業管理者(職名・交通局長。以下「交通事業管理者」という。)を置き、交通事業管理者の権限に属する事務を処理させるため、交通局を設置している。また、札幌市は、生活用水その他の浄水を市民に供給するため、水道事業を設置し、同法に基づき、その管理者として札幌市水道事業管理者(職名・水道局長。以下「水道事業管理者」という。)を置き、水道事業管理者の権限に属する事務を処理させるため、水道局を設置している(<証拠略>)。

3(一)  札幌市市長部局(以下「市長部局」という。)の職員三名(以下「本件市長部局職員」という。)は、それぞれ、地方公務員法(平成九年三月二八日法律第八号による改正前のもの。以下同じ。)五五条の二により定められた職員団体の業務にもっぱら従事することが許される期間を超えて、職員団体の業務にもっぱら従事し、その間、札幌市職員の服務及び休暇等の取扱いに関する規程に基づき、欠勤扱いとされていた。右欠勤期間は、以下のとおりである(<証拠略>)。

(1) 職員A 昭和六三年六月から平成二年一一月

平成三年四月から平成八年二月

(2) 職員B 平成二年九月から平成九年三月

(3) 職員C 平成五年一〇月から平成九年三月

(二)  (一)の欠勤期間中、札幌市は、本件市長部局職員に対して給与を、共済組合に対して本件市長部局職員についての負担金をそれぞれ支出した。

4(一)  交通局の職員一名(以下「本件交通局職員」という。)及び水道局の職員一名(以下「本件水道局職員」といい、本件交通局職員と合わせて以下「本件公営企業職員」という。)は、地方公営企業労働関係法六条及び附則四項により定められた労働組合の業務にもっぱら従事することが許される期間を超えて労働組合の業務にもっぱら従事し、その間、札幌市職員の服務及び休暇等の取扱いに関する規程に基づき、欠勤扱いとされていた。右欠勤期間は、以下のとおりである(<証拠略>)。

(1) 職員D 平成元年一〇月から平成三年九月、平成四年一〇月

平成五年一一月から平成九年三月

(2) 職員E 平成七年一月から平成九年三月

(二)  (一)の欠勤期間中、札幌市は、本件公営企業職員に対して給与を、共済組合に対して本件公営企業職員についての負担金をそれぞれ支出した。

5  原告は、平成九年五月八日、札幌市監査委員に対し、欠勤扱いとされてきた本件市長部局職員及び本件公営企業職員について、札幌市が負担金を支出したことは不当であり、これによって札幌市が右支出相当額の損害を被ったとして、この損害を補填するため、市長部局職員については被告に、本件公営企業職員については被告と交通事業管理者ないし水道事業管理者に共同してそれぞれ右の損害を賠償させることを求めて、住民監査請求をした(<証拠略>)。

6  札幌市監査委員は、5の住民監査請求について監査をし、平成九年七月七日、原告に対し、以下のとおり監査結果を通知した。すなわち、平成八年五月七日までに支出された負担金に関しては、請求時に支出行為から一年を経過しているとして地方自治法二四二条二項本文によりこれを却下し、その余の請求については、監査の結果、本件市長部局職員(ただし、右却下により監査の対象とされなかった一名を除く。以下本項において同じ。)及び本件公営企業職員はいずれも実態として職員団体又は労働組合の事務にもっぱら従事してきた者であるから少なくとも地方公務員等共済組合法(以下「共済組合法」という。)一一三条の適用にあたっては「職員団体の事務に専ら従事する職員」に該当する者として扱うのが相当であったとした。

そして、右を前提に、欠勤期間中に右職員らについて支出した負担金相当額から、右職員らを職員団体又は労働組合の事務にもっぱら従事する者として扱った場合に札幌市が負担すべき金額を控除した額(以下「負担金差額」という。)は本来札幌市が支出すべきでなかったところ、札幌市の損害を回復するためには、市長に対しては本件市長部局職員に関し、交通事業管理者に対しては本件交通局職員に関し、水道事業管理者に対しては本件水道局職員に関し、それぞれ生じている負担金差額を共済組合から札幌市に返還させることで十分であるとし、監査対象期間中の負担金差額につき右の措置をとることを勧告したが、市長等の損害賠償義務の有無については判断しなかった(<証拠略>)。

7  市長、交通事業管理者及び水道事業管理者は、右の監査結果を受けて、右職員らにつき共済組合法一一三条の定める負担金の適用区分を同条二項から五項に変更し、共済組合に対して、本件市長部局職員及び本件公営企業職員の前記3及び4の欠勤期間にかかる負担金差額(市長部局職員につき一一〇四万〇八五五円、交通局職員につき三八七万四二三六円、水道局職員につき一五六万二九五五円、合計一六四七万八〇四六円)の返還請求をするとともに、職員団体及び労働組合に対して右負担金差額の負担義務があることを通知したところ、平成九年七月三〇日、共済組合は右各負担金差額をそれぞれ納付した(<証拠略>)。

また、札幌市は、平成九年八月五日、本件市長部局職員から、同月六日、本件交通局職員から、同月五日、本件水道局職員から、いずれも返還の名目で、前記3及び4の欠勤中の給与相当額(市長部局職員は合計三二〇〇万〇八六〇円、交通局職員は八七九万四三一一円、水道局職員は六〇九万二六一〇円、合計四六八八万七七八一円)の納付を受けた(ただし、地方自治法二三六条により消滅時効にかかった分を除く。<証拠略>)。

二  争点

1  本件公営企業職員に関する部分の訴えの適法性

(一) 被告の主張

本件訴えは違法な公金の支出を請求原因とする地方自治法二四二条の二第一項四号所定の「当該職員」に対する損害賠償の請求であるところ、右「当該職員」とは、原告が主張する違法な公金の支出に関する財務会計上の行為を行う権限を法令上本来的に有するものとされている者及びこれらの者から権限の委任を受けるなどして権限を有するに至った者を意味し、およそ右のような権限を有する職ないし地位にあると認められない者はこれに該当しないと解すべきである。

ところで、交通局及び水道局はいずれも地方公営企業であり、これらの財務会計上の行為をする権限は、地方公営企業法八条及び九条により、それぞれについて置かれた管理者である交通事業管理者及び水道事業管理者にそれぞれ属することとされているのであって、市長はその権限を有しない。

したがって、被告は「当該職員」に該当しないのであるから、本件訴えのうち、市長の職にある被告に対し、本件公営企業職員について支出された給与及び負担金の各相当額並びにこれらに対する遅延損害金の損害賠償を求める部分は、被告を誤ったもので不適法である。

(二) 原告の主張

市長は、地方公営企業法により、地方公営企業の管理者の任命権及び懲戒処分権を有するなど管理者を監督する地位にあり、しかも被告は本件公営企業職員についても自ら欠勤扱いにさせ、又は本件公営企業職員についての欠勤扱いを知った上でこれを容認若しくは黙認していたのであるから、札幌市の損害発生を防止すべき立場にあったのにこれを怠ったものであって、欠勤中の本件公営企業職員について支出された給与及び負担金についても損害賠償責任を免れない。

2  給与の支出に関する部分の訴えの適法性

(一) 被告の主張

本件訴えのうち、本件市長部局職員に対して支出した給与相当額及びこれに対する遅延損害金の損害賠償を求める部分は、本件市長部局職員に対する給与の支出に関して地方自治法二四二条一項の住民監査請求を経ていないから、不適法である。

なお、原告は、地方自治法二四二条五項による監査委員に対する陳述の際に給与等の支出に関しても監査を行うよう請求した旨主張するが、監査委員に対する陳述は、住民監査請求を行うためには請求の要旨を一〇〇〇字以内で記載した書面によることとされているため、当該請求の要旨を口頭で具体的に補足するため機会が与えられているものに過ぎず、当初の請求時の書面に全く記載のなかった請求を追加することはできない。したがって、本件市長部局職員に対する給与の支出に関しては住民監査請求を経ているとはいえない。

(二) 原告の主張

本件市長部局職員に対する給与の支出については、住民監査請求の書面には、一〇〇〇字以内という字数制限があるため記載していないが、平成九年六月一〇日に行った監査委員に対する口頭での陳述の際に補充したのであるから、住民監査請求を経ているというべきである。

3  原告の住民監査請求時に既に一年を経過していた支出に関する部分の訴えの適法性

(一) 被告の主張

(1) 札幌市監査委員は、本件訴えのうち平成八年五月七日までに支出された給与及び負担金各相当額並びにこれらに対する遅延損害金の損害賠償を求める部分について、原告が住民監査請求をした時点において既に支出行為から一年が経過し、かつ、支出行為から一年を経過した後に住民監査請求をしたことについて正当な理由がないとして、これを監査の対象とせず、地方自治法二四二条二項本文によって右部分の住民監査請求を却下しているから、右部分についての訴えは、適法な住民監査請求を経たものとはいえず、不適法である。

(2) 本件で問題となっている給与及び負担金は、いずれも予算に計上された上で適正な手続により支出されているし、職務を欠勤して職員団体又は労働組合の業務にもっぱら従事する職員(以下「欠勤職員」という。)の存在については平成七年七月に報道されているところ、札幌市はそれに先立つ報道機関の取材に応じているのであって、被告又は札幌市が住民に対してその支出を隠蔽し又は秘匿したような事情は全くない。

また、仮に、問題の給与及び負担金の支出並びにその前提となる欠勤職員の存在について、支出行為の時点で札幌市住民が知り得ないとしても、前記のとおり、欠勤職員の存在については平成七年七月に広く報道されており、札幌市住民がその報道の後に相当の注意をもって調査すれば、遅くとも同年八月ないし九月ころには欠勤職員にかかる給与及び負担金の支出を知ることが可能であったし、札幌市職員の出勤簿等が公開されないとしても、職員名及びその欠勤期間を特定せずに住民監査請求をすることも可能なのであって、出勤簿等の非公開が住民監査請求に関する客観的障害にあたるとはいえないから、原告は遅くともそのころには住民監査請求をすることができたというべきである。したがって、原告は給与及び負担金の支出を知ることができたときから相当な期間内に住民監査請求をしたとはいえない。

以上のとおり、原告には支出行為から一年を経過した後に住民監査請求をしたことについて正当な理由がない。

(二) 原告の主張

本件で問題となっている給与及び負担金が予算に計上された上で支出されたものであるとはいっても、予算では欠勤職員の存在は明らかにならないから、予算に計上されているからといって問題の給与及び負担金の支出を他の支出と区別して認識することはできない。また、欠勤職員の存在について平成七年七月に報道されたといっても、営業月刊誌である「道新トゥデー」誌に掲載されただけであり、同誌はだれもが目にするものではないから、これによって札幌市民が欠勤職員の存在やそれについての給与及び負担金の支出を知ることができるとはいえない。したがって、この時点で札幌市住民は、欠勤職員の存在や、それについての給与及び負担金の支出を知ることのできない状態に置かれていたというべきである。

本件で問題となっている欠勤職員の存在が初めて明らかとなったのは、平成九年二月二八日の札幌市議会定例会における松浦忠議員の質問に対する被告の市長としての答弁が同年三月一一日付北海道新聞及び札幌市の広報誌である「広報さっぽろ」四月号に掲載されたことによるものであり、札幌市住民が欠勤職員の存在を知ることができたのは、同年三月一一日付北海道新聞及び「広報さっぽろ」四月号が配布された時点と解するべきである。

原告は住民監査請求を右時点から相当な期間内にしたというべきであり、したがって、平成八年五月七日までの給与及び負担金の支出について、当該支出行為から一年を経過した後に原告が住民監査請求をしたことについて正当な理由があるから、当該部分についても、適法な監査請求を経ているものというべきである。

4  損害の補填

(一) 被告の主張

本件訴えのうち、本件市長部局職員について支出された負担金及び給与の各相当額並びにこれらに対する遅延損害金の損害賠償を求める部分は、以下のとおり、不適法であり、かつ、理由がない。すなわち、仮に原告の主張のとおり被告が札幌市に対して損害を与えたとしても、その損害は、本件市長部局職員について支出した負担金相当額から右職員らを職員団体の事務にもっぱら従事する者として扱った場合に札幌市が負担すべき金額を控除した額(負担金差額)及び給与相当額であり、被告は、右損害のうち負担金差額について、平成八年五月七日以前の支出にかかる九七〇万一二八九円及び平成八年五月八日以降の支出にかかる一三三万九五六六円をいずれも平成九年七月三〇日に共済組合から札幌市に返還させ、更に、給与相当額三二〇〇万〇八六〇円を同年八月五日に当該職員から札幌市に返還させており、これによって損害は既に補填されているから、訴えの利益を欠くものであって、不適法であり、かつ、理由がない。

(二) 原告の主張

本件市長部局職員は札幌市職員であるから、共済組合は札幌市に対し負担金相当額の返還をする義務を負っていない。また、札幌市には共済組合から負担金相当額の返還を受ける根拠がない。したがって、被告が主張する「返還」は共済組合からの単なる寄付に過ぎない。更に、欠勤は給与支給の対象となっており、本件市長部局職員が自発的に給与を返還したからといって、札幌市には本件市長部局職員から給与相当額の返還を受ける根拠がなく、これも単なる寄付に過ぎない。

また、被告及び参加人は、共済組合が「返還」として札幌市に支払った金額が、札幌市が被った損害額と一致する旨主張するが、共済組合が「返還」として札幌市に支払った金額の算定根拠が不明であるから、これが札幌市が被った損害額と一致するとはいえない。

よって、いずれにしても、札幌市が被った損害が既に補填されているとはいえない。

第三争点に対する判断

一  争点1(本件公営企業職員に関する部分の訴えの適法性)について判断する。

1  本件訴えは、職員団体又は労働組合の業務にもっぱら従事するため欠勤している本件市長部局職員及び本件公営企業職員について札幌市が給与及び負担金を支出したことが違法であるとして、それによって札幌市が被った損害の賠償を札幌市長の職にある被告に対して請求するものであり、住民訴訟の一類型である地方自治法二四二条の二第一項四号所定の「普通地方公共団体に代位して行なう当該職員に対する損害賠償の請求」であると解されるところ、住民訴訟が自己の法律上の利益にかかわらない当該普通地方公共団体の住民という資格で特に法によって出訴することが認められるものであることにかんがみると、当該訴訟においては、右「当該職員」たる地位ないし職にある者を被告とすべきであり、もし当該訴訟において被告とされている者が、右「当該職員」たる地位ないし職にある者に該当しないならば、そのような訴えは不適法なものというべきである。そして、右「当該職員」とは、住民訴訟制度が同法二四二条の二第一項所定の違法な財務会計上の行為又は怠る事実を予防又は是正しもって地方財務行政の適正な運営を確保することを目的とするものと解すべきことからすると、当該訴訟においてその適否が問題とされている財務会計上の行為を行う権限を法令上本来的に有するものとされている者及びこれらの者から権限の委任を受けるなどして右権限を有するに至った者を意味し、その反面、およそ右のような権限を有する地位ないし職にあると認められない者はこれに該当しないと解するのが相当である。

2  そこで、本件公営企業職員についての給与及び負担金について、被告が支出行為を行う権限を有していたか検討するに、前記第二の一2のとおり、札幌市は、地方公営企業法に基づき、軌道事業、自動車運送事業及び鉄道事業の管理者として交通事業管理者を、水道事業の管理者として水道事業管理者をそれぞれ置いていることが認められるところ、これらの地方公営企業の管理者は、地方公営企業法八条一項により、同項各号によって地方公共団体の長の権限として留保されたもの及び法令に特別の定めがあるものを除き、地方公営企業の業務を執行し、当該業務の執行に関し当該地方公共団体を代表する権限を有しており、また、同法九条一一号によれば、管理者は出納その他の会計事務を行うこととされ、さらに同法施行令一八条一項によれば、管理者は地方公営企業の予算を執行することとされていることからすると、地方公営企業における財務会計上の行為を行う権限を法令上本来的に有するのは管理者であると解するのが相当である。

これに対し、地方公共団体の長は、管理者の任命権、罷免権及び懲戒権を有し(地方公営企業法七条の二第一項、七項及び八項)、管理者が作成した原案に基づいて地方公営企業の予算を調製し、議会の議決を経べき事件につきその議案を提出する権限を有するが(同法八条一項一号及び二号、九条三号及び六号)、管理者に対する包括的、一般的な指揮監督をすることはできず、ただ、同法一六条によって、住民の福祉に重大な影響がある地方公営企業の業務の執行に関しその福祉を確保するため必要があるとき又は当該管理者以外の地方公共団体の機関の権限に属する事務の執行と地方公営企業の業務の執行との間の調整を図るため必要があるときに、管理者に対して必要な指示をすることができるにとどまる。

右のとおりであるから、本件公営企業職員についての給与及び負担金の支出行為を行う権限は、本件交通局職員については交通事業管理者が、本件水道局職員については水道事業管理者が、それぞれ法令上本来的に有しているものと解されるのであって、市長は右権限を法令上本来的に有しているものとはいえない。また、市長が交通事業管理者又は水道事業管理者から、右権限の委任を受けるなどしたことを認めるに足りる証拠はないから、市長が委任などにより右権限を有するに至っていたともいえない。したがって、被告は地方自治法二四二条の二第一項四号の「当該職員」に該当しないというべきである。

3  なお、原告は、市長は管理者を監督する地位にあり、しかも被告は本件公営企業職員についても自ら欠勤扱いにさせ、又は本件公営企業職員についての欠勤扱いを知った上でこれを容認若しくは黙認していたのであるから、札幌市の損害発生を防止すべき立場にあったのにこれを怠ったものであって、損害賠償責任を免れない旨主張する。

しかしながら、1及び2で判示したとおり、地方自治法二四二条の二第一項四号の住民訴訟は、財務会計上の行為をする権限を有する地位又は職にある者を被告としなければならないと解されるところ、市長は管理者を包括的一般的に指揮監督する地位にはないのであって、管理者の任命権、罷免権及び懲戒権を有することなどをもって地方公営企業の財務会計上の行為をする権限を有すると解することはできない。

したがって、原告の主張は採用することができない。

4  以上のとおり、本件訴えのうち、市長の職にある被告に対し、本件公営企業職員について支出された給与及び負担金の各相当額並びにこれらに対する遅延損害金の損害賠償を求める部分は、地方自治法二四二条の二第一項四号の「当該職員」にあたらない者を被告としたものであって、不適法である。

二  争点2(給与の支出に関する訴えの適法性)について判断する。

1  地方自治法二四二条の二第一項本文は、普通地方公共団体の住民が、同法二四二条一項により住民監査請求をした場合において、その監査の結果に不服のあるときなど、同法二四二条の二第一項本文所定のときに限り、裁判所に対する訴えをもって同項各号所定の請求をすることを認めているのであるから、適法な住民監査請求を経ていないものについては、同項による住民訴訟は提起することが許されないものと解される。

2  そこで、本件において、本件市長部局職員に対する給与の支出について、適法な住民監査請求を経ているか検討するに、(証拠略)によれば、原告が当初監査委員に提出した請求書及び後に補正して提出した請求書のいずれにも、欠勤職員に関する負担金の支出について監査及び当該支出により生じた損害の賠償を請求する旨が記載されているにとどまり、欠勤職員に対する給与の支出については監査及び当該支出により生じた損害の賠償を請求する旨の直接の記載は存在しない。しかし、右各請求書には、「公務員の長期欠勤の法的根拠と、長期欠勤職員の給与等、公金からの支出の有無について調べ」たところ、「欠勤期間中の給与は労働組合が負担し」ていることが明らかになったことを前提として、負担金相当額の返還を請求する旨記載されており、欠勤期間中の給与を職員団体又は労働組合でなく札幌市において負担している場合には、当然給与についても監査請求をする趣旨を読みとることができるところ、原告は、本件市長部局職員に対する給与の支出に関し、平成九年六月一〇日に行った監査委員に対する口頭での陳述において、「給料が札幌市から一円たりとも支払われていないのかどうかを監査委員の責任において調べていただきたい」と述べているのであって(<証拠略>)、右陳述をも考慮すると、原告は、前記各請求書により、給与についても住民監査請求をしているというべきである。

3  以上のとおり、本件訴えのうち、本件市長部局職員に対して支出した給与相当額及びこれに対する遅延損害金の損害賠償を求める部分は、地方自治法二四二条一項の住民監査請求を経ており適法であると認められる。

三  争点3(原告の住民監査請求時に既に一年を経過していた支出に関する部分の訴えの適法性)について判断する。

1  地方自治法二四二条二項は、その本文において、住民監査請求は当該行為のあった日又は終わった日から一年を経過したときはすることができないと規定して監査請求の期間を定め、同時にただし書において、正当な理由があるときは、右期間を経過した後であっても監査請求をすることができると定めている。

これは、普通地方公共団体の財務会計上の行為が、たとえそれが違法ないし不当なものであったとしても、いつまでも監査請求の対象となり得るとしておくことは法的安定性を損ない好ましくないとの趣旨によって監査請求の期間を定めつつ、他方において、住民監査請求が、地方自治法二四二条一項にいう普通地方公共団体の違法若しくは不当な財務会計上の行為又は怠る事実が当該地方公共団体の構成員である住民全体の利益を害するものであるところから、これを防止するため、地方自治の本旨に基づく住民参政の一環として住民に対しその予防又は是正を監査委員に請求する権能を与え、もって地方財務行政の適正な運営を確保することを目的とした制度であることから、右の期間を経過した後であっても、正当な理由があるときは監査請求をすることを認めたものであると解される。

このような法の趣旨に照らせば、問題となっている財務会計上の行為について、当該普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査したときに客観的にみて当該行為を知ることができたと解されるときから相当な期間内に監査請求をしたときには、地方自治法二四二条二項ただし書の正当な理由が有るものと解するのが相当である。

2  そこで、本件において、平成八年五月七日までに行われた負担金及び給与の支出行為について、右支出行為がされてから一年を経過した後の平成九年五月八日に至るまで監査請求をしなかったことについて正当な理由があるかどうか検討する。

各項中に掲記した各証拠によると、以下の各事実が認められる。

(一) 本件市長部局職員についての負担金及び給与は、札幌市の予算に計上された上、通常の支出手続によって支出されていた(<証拠略>)。

(二) 平成七年七月ころ、月刊誌である「道新トゥデー」誌に「桂札幌市政の暗部?大長市労連書記長の特権」と題する記事が掲載され、右見出しを含む右雑誌の広告が北海道新聞に三日間に渡り掲載された(<証拠略>)。

右記事は、リード部分において「札幌市労働組合連合会などの同市の労組役員三人が、長期間にわたって『欠勤』のまま組合活動に専従している。」と記載し、札幌市総務局職員部勤労課長は、「円滑な労使関係を保つために、行政の裁量権の中で取った『特例措置』です。」「確かに、法が求める趣旨とはズレがありますが、『欠勤扱い』ということで市は給料を払っていないし問題はないと思います」と説明したと記載している(<証拠略>)。

(三) 平成九年二月二八日、札幌市議会本会議において、被告は市長として、松浦忠議員の質問に対し、組合専従役員について地方公務員法の定める在籍専従期間を超えて許可をしたことはなく、必要があってさらに組合業務に従事する場合は欠勤によって対応しており、給与上は無給であること、右は安定的かつ円滑な労使関係を維持する必要からされたものであって無断欠勤の場合と同様に扱うことはできないとの趣旨の答弁をした(<証拠略>)。

(四) (三)の答弁については、札幌市の広報誌である「広報さっぽろ」平成九年四月号に記事として掲載された(<証拠略>)。

(五) 平成九年三月一〇日、札幌市議会第一部予算特別委員会において、被告は市長として、松浦忠委員の質問に対し、欠勤職員の扱いについて同趣旨の答弁をした(<証拠略>)。

(六) (五)の答弁については、平成九年三月一一日付の北海道新聞札幌市内版に記事として掲載された(<証拠略>)。

3  右の事実関係の下で、欠勤中の本件市長部局職員についての負担金の支出行為に関して、原告のような一般の札幌市住民が相当の注意力をもって調査したときに客観的にみてどの時点で当該行為を知ることができたと解すべきか検討する。

この点、被告は、本件市長部局職員についての負担金及び給与は、予算に計上された上で適正な手続によって支出されているから、札幌市住民が問題の支出行為を知ることについて客観的障害があったとはいえない旨主張する。しかしながら、本件市長部局職員についての負担金及び給与が予算に計上されているとはいえ、予算には負担金及び給与の各総額が計上されるに過ぎず(<証拠略>)、欠勤職員が存在することは予算からは認識することができないから、これをもって札幌市住民が欠勤職員の存在や、欠勤中の本件市長部局職員についての負担金及び給与の支出行為を知ることができたとはいえない。

また、被告は、平成七年七月ころに札幌市における欠勤職員の存在が広く報道されたから、札幌市住民は遅くとも同年八月ないし九月ころには欠勤職員についての負担金及び給与の支出行為を知ることが可能であった旨主張する。しかしながら、前記認定によれば、右報道にかかる雑誌の新聞広告のみからでは当該記事が欠勤職員の存在を指摘するものであると認識することは不可能であり、また、「道新トゥデー」誌に掲載されたことのみをもってしては欠勤職員の存在が広く報道されたとはいえず、他にそのころ欠勤職員の存在が広く報道されたことを認めるに足りる証拠はないから、結局、平成七年七月ころに欠勤職員の存在について「道新トゥデー」誌に記事として掲載されたことをもって、札幌市住民が欠勤中の本件市長部局職員についての負担金の支出行為を知ることができたとはいえない。

他方、前記2の事実関係の下では、(三)の平成九年二月二八日の札幌市議会本会議における市長の答弁が、札幌市の広報誌である「広報さっぽろ」平成九年四月号に記事として掲載されてこれが各戸に配布された時点(右時点は必ずしも明確ではないが、他の記事の内容からして同年三月中旬以降と認められる。)又は(五)の平成九年三月一〇日の札幌市議会第一部予算特別委員会における被告の答弁が、北海道新聞平成九年三月一一日付札幌市内版に記事として掲載されてこれが各戸に配布された時点においては、これらの答弁が、給与上は無給であることを指摘するものであることを考慮しても、札幌市住民が相当の注意力をもって調査すれば欠勤中の本件市長部局職員についての負担金及び給与の支出行為を知ることができたと解される。

4  原告は、平成九年五月八日に欠勤職員についての負担金及び給与の支出について監査請求をしているところ、右請求は前記3で判示したとおり、札幌市住民が相当の注意力をもって調査したときに客観的にみて欠勤中の本件市長部局職員についての負担金及び給与の支出行為を知ることができた時点から約二か月を経過したに過ぎないから、相当な期間内にしたものというべきである。

よって、原告には、平成八年五月七日までに行われた欠勤中の本件市長部局職員についての負担金及び給与の支出行為について、平成九年五月八日に至るまで監査請求をしなかったことについて正当な理由があり、これについても適法な監査請求を経ているものというべきであるから、本件訴えのうち、平成八年五月七日までに支出された本件市長部局職員についての負担金及び給与相当額及びこれらに対する遅延損害金の損害賠償を求める部分は、監査請求が平成九年五月八日にされたことをもって不適法ということはできない。

四  争点4(損害の補填)について判断する。

1  前記一1で判示したとおり、本件訴えは地方自治法二四二条の二第一項四号所定の住民訴訟であると解されるところ、同項本文は、普通地方公共団体の住民は、同法二四二条一項による住民監査請求をした場合において、同条三項の規定による監査委員の監査の結果若しくは勧告若しくは同条七項の規定による普通地方公共団体の議会、長その他の執行機関又は職員の措置に不服があるときなど、同法二四二条の二第一項本文所定の場合に、同項四号の損害賠償請求等の訴えを提起することができる旨定めている。

右を前提に本件訴えを検討するに、本件は、原告が、市長が監査委員の勧告を受けて共済組合から負担金差額を返還させるという措置をとったこと及び本件市長部局職員から給与相当額の返還を受けたことにつき不服があるとして、被告が札幌市に返還することを求めているのであって、この限りにおいては右条項本文の定める要件に不足するところはなく、不適法であるということはできないのであって、損害の填補の有無は請求の当否の判断においてされるべきと言うほかはない。

そこで、原告主張の行為の違法性、それによる損害の発生の有無及びあるとすればその額並びに損害補填の有無について順に検討する。

2  地方公務員法五五条の二第一項は、地方公共団体の職員は、任命権者の許可を受けて登録を受けた職員団体の役員となる場合を除いて、職員団体の業務にもっぱら従事することができない旨規定し、同条三項は、地方公共団体の職員が職員団体の業務にもっぱら従事することのできる期間は、職員としての在職期間を通じて五年を超えることができないと定めている。

ところが、前記第二の一3(1)のとおり、本件市長部局の職員は、それぞれ、地方公務員法により定められた職員団体の業務にもっぱら従事することが許される期間を超えて、その職務を欠勤して、職員団体の業務にもっぱら従事していたことが認められるのであるが、右の取り扱いは、右の地方公務員法の規定に照らせば明らかに違法である。そうすると、札幌市が欠勤中の本件市長部局職員について負担金を支出し、給与を支払った行為もまた、違法な行為であるといわざるを得ない。

3  そこで、札幌市が右違法行為に起因して被った損害について検討する。

札幌市は、共済組合法一一三条二項に定められた負担金のうち、短期給付(一号)、長期給付(二号。ただし同項三号に掲げるものを除く。)及び福祉事業(四号)に要する費用については、在籍職員の給料月額等の総額に一定の負担率割合を乗じる等の方法により一か月ごとに計算し、これを支出していたところ、本件住民監査請求の結果においては、欠勤中の本件市長部局職員を在籍職員と扱って計算した支出総額と、職員団体の事務にもっぱら従事する職員として扱って計算した支出総額との差額を、札幌市が支出すべきでなかった額として計算した(<証拠略>)。これを受けて、札幌市は、負担金の返還措置として、本件市長部局職員につき、その適用区分を同条二項から同条五項に変更して、札幌市が負担すべきでなかった負担金を計算したところ、右金額は、一一〇四万〇八五五円となった(<証拠略>)。したがって、本件市長部局職員に関する負担金相当額の損害は一一〇四万〇八五五円であると認められる。また、札幌市の計算によって、本件市長部局職員について支出された給与に関する損害は、三二〇〇万〇八六〇円と認められる(<証拠略>)。

ところで、原告は、負担金につき一六四七万八〇四六円、給与につき四六八八万七七八一円が違法な公金の支出であると主張しているところ、右は札幌市が計算した欠勤中の本件市長部局職員及び本件公営企業職員について支出された負担金差額の合計である一六四七万八〇四六円及び給与の合計である四六八八万七七八一円をそれぞれ基礎としつつ、本件市長部局職員に関する負担金の支出に関する札幌市の損害は、市長部局職員に関する負担金差額である一一〇四万〇八五五円であり、本件市長部局職員に関する給与の支出に関する札幌市の損害は、市長部局職員に対する給与相当額である三二〇〇万〇八六〇円であるとそれぞれ主張しているものと解される。もっとも、原告は、右の各計算は算定根拠が示されず一方的な数字とするが、いずれにせよ、右の各損害額以外の具体的な額を主張するものではなく、本件全証拠によっても、札幌市が右の各金額以上の損害を被ったことを認めるに足りる証拠は存在しない。

そうすると、原告の右損害に関する主張は、右の各金額の限りで理由がある。

4  ところで、前記第二の一7のとおり、3で認定した欠勤中の本件市長部局職員について支出された負担金について、共済組合が平成九年七月三〇日、これを札幌市に返還するとの名目において、右の負担金相当額である一一〇四万〇八五五円を札幌市に納付したこと及び3で認定した欠勤中の本件市長部局職員に対して支出された給与相当額について、支出の相手方である本件市長部局職員が平成九年八月五日、これを札幌市に返還するとの名目において、右の給与相当額である合計三二〇〇万〇八六〇円を札幌市に納付したことがそれぞれ認められる。

この点、原告は、右各納付について、共済組合は札幌市に対し負担金相当額を返還する義務を負っておらず、また札幌市には共済組合から負担金相当額の返還を受ける根拠がないし、欠勤は給与支給の対象であり、札幌市には本件市長部局職員から給与相当額の返還を受ける根拠がないから、右各納付は共済組合及び本件市長部局職員から札幌市への寄付に過ぎない旨主張する。

しかしながら、既に判示したとおり、欠勤中の本件市長部局職員についての負担金及び給与は違法に支出されたものであって、共済組合及び本件市長部局職員はいずれも札幌市の損失において不当に利得したものであるから、共済組合及び本件市長部局職員が右の負担金及び給与の各相当額につき札幌市に対して不当利得返還債務の履行をすることは当然であり、札幌市には共済組合及び本件市長部局職員から負担金及び給与の各相当額の返還を受ける根拠があるから、これらの返還によって札幌市が被った損害は返還された金額の限度で補填されると解される。

そうすると、右のとおり、共済組合は、3で認定した欠勤中の本件市長部局職員について支出された負担金相当額の全額を札幌市に返還し、本件市長部局職員は、3で認定した欠勤中の本件市長部局職員について支出された給与相当額の全額を札幌市に返還しているのであるから、原告の請求にかかる負担金及び給与の各相当額自体については、既に全額が補填されているものというべきである。

したがって、原告の、本件市長部局職員について支出された負担金及び給与の各相当額自体についての損害賠償請求は理由がない。

5  ところで、原告の請求にかかる札幌市の損害は、右の限りにおいて補填されているものの、被告の不法行為により生じたものとして、損害の発生と同時に遅滞に陥り、支出された負担金及び給与の各相当額の損害が補填されるまで年五分の割合による遅延損害金が発生していたものと解される。そこで、給与相当額及び負担金相当額のそれぞれについての遅延損害金の額について検討する。

(一) 給与相当額についての遅延損害金

本件で提出された証拠によれば、少なくとも、本件市長部局職員が欠勤していた期間に支出された給与総額につき、右給与の最終支給日の翌日からその返還した日である平成九年八月五日までの期間について遅延損害金が発生していることが認められるところ、各職員についての給与総額、最終支給日及び遅延損害金の額は以下のとおりである(<証拠略>)。

(1) 職員A

給与総額 九八〇万〇二三五円

最終支給日 平成八年二月二一日

遅延損害金 七一万一五二三円

(2) 職員B

給与総額 一二七〇万八〇八三円

最終支給日 平成九年三月二一日

遅延損害金 二三万八四九四円

(3) 職員C

給与総額 九四九万二五四二円

最終支給日 平成九年三月二一日

遅延損害金 一七万八一四七円

(二) 負担金相当額についての遅延損害金

本件で提出された証拠によれば、少なくとも、被告が市長に就任した後であることが明らかな平成四年度以降に支出された負担金につき、各年度の最終日(三月三一日)の翌日から返還した日である平成九年七月三〇日までの期間について遅延損害金が発生していることが認められるところ、各年度についての負担金額及び遅延損害金の額は以下のとおりである(<証拠略>)。

(1) 平成四年度

負担金額 一一八万六七七七円

遅延損害金 二五万七〇二六円

(2) 平成五年度

負担金額 一六〇万三七八二円

遅延損害金 二六万七一五〇円

(3) 平成六年度

負担金額 一九七万六七一一円

遅延損害金 二三万〇四三五円

(4) 平成七年度

負担金額 二〇一万八七四二円

遅延損害金 一三万四三九八円

(5) 平成八年度

負担金額 一四五万七〇五四円

遅延損害金 二万四一五一円

(三) したがって、原告の、本件市長部局職員について支出された給与及び負担金の各相当額の遅延損害金の損害賠償請求は、右の限度で理由がある。

第四結論

よって、原告の本件訴えのうち、被告に対し、本件公営企業職員について支出された給与及び負担金各相当額並びにこれらに対する遅延損害金の損害賠償を求める部分は不適法であるからこれを却下し、原告の請求のうち、本件市長部局職員について支給された給与及び負担金各相当額に対する遅延損害金の損害賠償を求める部分は、二〇四万一三二四円の限度で理由があるからこれを認容し、原告のその余の請求は理由がないからこれを棄却することとし、仮執行宣言については、相当でないからこれを付さないこととし、主文のとおり判決する。

(口頭弁論終結の日 平成一〇年六月五日)

(裁判長裁判官 小林正 裁判官 谷口豊 裁判官 守山修生)

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